Archive for 8月, 2012

PostHeaderIcon 食堂のおばちゃん

いつも市場に行くと必ず寄る食堂があります。
その食堂はいつもお客さんで大にぎわい。
そこのホールには、もう名物と言っていいお馴染みのおばちゃんが居りまして、
自分が父に連れられて行ってた中学時代から知ってるおばちゃん。

当時から凄いと思ってたのはそのおばちゃんの記憶力で、
まず伝票を書かない。注文は全て記憶する。誰が何を頼んで食べたかを全部覚えてて、会計まで全部その記憶でこなして行く。
どんなに忙しくてもホールはそのおばちゃんただ一人。席数は50席くらい。たとえ満席になっても必ず一人。

市場の食堂なので馴染みの顔が殆どで、そんなもんだから、聞いてると注文も個性的なものが割と多くて。
ある人が「ハムエッグね」と頼むとおばちゃんは厨房に向かって「ハムエッグ両面焼き~!コショウ抜き~!」とか言って。最初聞いた時ホントびっくりしました。
いつも大盛りの人は何も言わなくても「だいちゃん~!」(大盛りのことです)って言う。

客「ラーメン」
おばちゃん「ラーメン薬味抜き麺硬め~!」

客「ざるそばね」
おばちゃん「ハイざるそばだいちゃ~ん!たらこでおにぎり一粒~!」

もう慣れましたが、しばらくは行くたんびにおばちゃんのホールテクに魅入っちゃって、ぼーっとしてるところを「おにいちゃんは決まった?」って聞かれちゃって。

父のあとを継いで暫くは、自分も行けばチャーハンと決めてまして、普通は味噌汁が付くんだけど途中から特別に中華スープに替えてくれて、
以来、行けば「いつものでいいの?」と聞かれ、「チャーハン中華スープで~!」って。

同じ飲食業に就いてる身ですから、(市場にくる人は皆そうですが)お店から特別扱いを受けると言うのは、非常に気持ちのいいことであります。
その特別扱いを、ほぼ全員の客にやってのけるおばちゃん。

市場には食堂として構えてるブースが隣り合って2軒あって、片や市場開業以来続く老舗食堂。そのお隣は、自分が知ってるだけで既に4軒目という入れ替わりの激しさ。しかも現在は入り手が居ないのか空き店舗となっております。

一度、そのお隣にバイキングのお店が入る話になった時、食堂のおばちゃんは不安そうに「なんか食べ放題のお店が出来るらしいのよー…。お客さん取られちゃわないかしら…。」と不安そうに話していました。
「それは心配ないよー」とだけ言っておきましたが。

先日、お店がお休みの日に母も連れて市場に行きました。帰りに父のお墓参りに寄るつもりだったので。
母はちょっと前まで肝炎の治療をしていて、何年も具合がよくない状態続きだったのもあり、自分が市場の食堂に行くとほぼ毎回「お母さんは元気?」ってそのおばちゃんに聞かれて。
たまに一緒に行くと、そのおばちゃんは大喜びしてくれます。

そして先日、いつものように買出しを終えて食堂の席に着いたら、
「こないだお母さんに会えてよかったぁ。今月で辞めることになったの」と。

最近凄くキツそうにお仕事をしていたし、薬に負けて肌がブツブツになっちゃってたりと色々あったのでそのせいかなぁとは思ったのですが、そのへんは特に触れずに「おおーそうなんだ!長いことお疲れ様でしたー!」と功労を讃えました。
聞かなかったけど、ずいぶん長いこと勤めてたんだろうなー。両親が行き始めたときは既に居たって聞いたから、少なくとも28年。

そのおばちゃんにはひとつ魔法(とこちら側が勝手に呼んでいる)の力があって、
食堂での食事が終わって会計を済ませたときに、いつもはだいたい「どうもねーありがとうございましたー」とか「おかあさんによろしくねー気をつけてー」とかなんだけど、
稀に「お稼ぎなさーい」って言うんです。あんまり聞かない挨拶用語なのでいつも凄く印象に残って、残ってるもんだからわりとすぐその魔法的な効果に気付いて。

おばちゃんに「お稼ぎなさい」って言われた日は、必ず大忙しになる。

自分も滅多に言われないどころか、他のお客さんに言ってるのも聞いたことがないくらいレアで、たまに言われると「キター!」ってなって帰ってから必死で仕込みしたりして。
凄い魔法でした。ありがとうございました。

魔法がなくなっても、これからも頑張って行こうと思います。

食堂のほうは、そのおばちゃんが退職されても、後任の方がこれまた凄い活気があって物覚えが素晴らしいので、何も心配はいらないと言った感じです。

今月一杯だから、もうあと1回は会えるかな。